ハイエンドモニターは「買って挿すだけ」では性能の半分も出ません。
- M10Sは初期設定がやや青みがかって暗め。しかも480Hzは手動で有効化が必要
- XL2566X+はDyAc2とオーバードライブの組み合わせ方を間違えると逆残像が悪化
この記事では、両モニターの「開封直後にやるべき設定」から「競技向けの詰め設定」まで、実測レビューや公式情報をもとに具体的な数値で解説します。
INZONE M10S 編
STEP 1:接続と480Hzの有効化
接続はDisplayPort一択です。
| 接続 | 最大リフレッシュレート | 備考 |
|---|---|---|
| DisplayPort 2.1(付属ケーブル) | 480Hz | 推奨 |
| HDMI 2.1 | 480Hz | DSC圧縮あり |
接続したら以下を必ず確認してください。初期状態では480Hzになっていないことがあります。
- Windowsの「設定」→「システム」→「ディスプレイ」→「ディスプレイの詳細設定」
- リフレッシュレートを480Hzに変更
- NVIDIAコントロールパネル→「解像度の変更」でも480Hzになっているか確認
⚠️ NVIDIAユーザーの注意点 RTX 40シリーズまでのグラボはDP1.4接続になるため、QHD/480HzではDSC(映像圧縮)が必ず有効になります。画質の実害はほぼありませんが、DLDSR(超解像)が使用不可になります。DLDSRを使いたい場合はリフレッシュレートを下げる必要があります。
STEP 2:G-SYNCの設定
M10Sの強みは低残像とVRRを両立できること。G-SYNC対応GPUなら有効化推奨です。
- NVIDIAコントロールパネル→「G-SYNCの設定」
- 「G-SYNC、G-SYNC互換を有効化」にチェック
- 「フルスクリーンモードで有効化」を選択
なお競技タイトルでfpsが480を大きく超える場合(VALORANTなど)は、G-SYNCを切ってfps無制限で回す派と、G-SYNC+フレームレート上限(475fps前後)で安定させる派に分かれます。ティアリングが気にならないなら前者、画面の安定感重視なら後者を試してください。
STEP 3:画質モード完全解説(ここがM10Sの心臓部)
M10SのSDR画質モードは全7種類、HDRは全4種類。単なる色味プリセットではなく、モードによって色域制限の有無やピーク輝度の上限まで変わるため、仕組みを理解して選ぶ必要があります。
SDRモード全7種類の中身
| モード | 中身 | 色域 |
|---|---|---|
| FPS Pro+ | Fnatic VALORANTチームと共同開発。敵の輪郭に使われる色(赤・黄・紫)を重点的に強調し、有機ELの輝度・コントラストを最大活用して敵を浮かび上がらせる | 広色域 |
| FPS Pro | eスポーツ大会標準のTN液晶の画質特性をシミュレート。発色や階調の「あのTNっぽさ」を意図的に再現 | 制限あり |
| MOBA/RTS | ゲーム内オブジェクトを識別しやすいよう彩度と鮮明度を調整 | 広色域 |
| ゲーム | 色味とコントラストを強調した汎用ゲームモード | 広色域 |
| シネマ | 映像鑑賞向けの落ち着いた画作り | 広色域 |
| 標準 | ニュートラル。デスクトップ作業向け | 広色域 |
| sRGB | sRGB色域に固定 | 制限あり |
FPS Pro+とFPS Proの使い分け
この2つは思想がまったく違います。
- FPS Pro+=「有機ELだからできる視認性」を追求した攻めのモード。基本はこれ一択
- FPS Pro=「TNから乗り換えた人の違和感をなくす」ための互換モード。色域に制限がかかるので、有機ELの発色を捨ててでも慣れた画面でプレイしたい人専用
FPS Pro+をベースに、白色をわずかに強める(色温度を微調整する)とさらに見やすくなるという運用が定番化しています。
HDRモードは「どれを選ぶか」でピーク輝度が変わる
M10SのHDRはモードごとに輝度上限が異なります(実測レビュー値)。
| HDRモード | ピーク輝度(実測) | 評価 |
|---|---|---|
| ゲームHDR | 約1340cd/m² | 最も明るくHDRの迫力が出る |
| RPG HDR | 約1060cd/m² | バランス型 |
| シネマHDR | 約790cd/m² | 映画向けの落ち着き |
| DisplayHDR | 約470cd/m² | 規格準拠だがSDRと大差なく、選ぶ意味が薄い |
シングルプレイの高画質ゲームや動画ではゲームHDR/RPG HDRを推奨。ただし競技FPSではHDR自体をオフに。 明滅で視認性が不安定になるうえ、競技シーンでHDRを使うプロはほぼいません。
プロの設定をそのまま輸入する裏技
ソニー公式がFnaticのVALORANT/Apexプロ選手の画質設定をJSONファイルで配布しています。
- 公式サイト「Pro’s Picture Settings」ページからJSONをダウンロード
- PCソフト「INZONE Hub」の[本体設定]→[インポート]で読み込み
- 即座にモニターへ反映(選手の設定に24.5インチモードが含まれる場合は画面サイズも変わります)
JSONはテキストエディタで開けば設定値を直接確認できるので、「どの項目をどれくらい弄っているのか」をカンニングして自分の設定に部分的に取り込むのも有効です。 ※INZONE Hubのフル機能利用にはUSB Type-Bケーブルが必要(付属しません)
STEP 4:画質の微調整(初期設定のままはNG)
実測レビューで判明している通り、M10Sの初期設定は青みがかっていて暗部が潰れ気味です。付属のキャリブレーションレポートには「色温度6700K/ガンマ2.2に校正済み」とありますが、実測では6250K前後/ガンマ1.9〜2.0だったという報告があり、鵜呑みにできません。
| 項目 | 推奨値 | 理由 |
|---|---|---|
| 明るさ | 80〜100 | 最大でも約270cd/m²(SDR時)なので遠慮なく上げてOK |
| 色温度 | 「暖色寄り」に1段階調整 | 初期値の青み補正。デスクトップの白背景で紙の白に近づける感覚で |
| ブラックイコライザー | 3〜5 | 0〜10で設定可能。暗所の敵の視認性向上。上げすぎると全体が白っぽくなり、逆にコントラストによる立体感を失う |
| ガンマ | 初期値から暗部を確認しながら調整 | 初期状態は黒潰れ(ブラッククラッシュ)気味の報告あり |
調整の順番は「①明るさ→②色温度→③ブラックイコライザー」。ブラックイコライザーを先に触ると、色温度調整後に見え方が変わって二度手間になります。
STEP 5:24.5インチモードの活用
FPSのときだけ画面を24.5インチ相当に縮小できる機能。表示位置は2種類あります。
- センター:画面中央に表示
- ボトム:画面下部に表示(Fnatic選手のアドバイスで搭載。モニターを見下ろす姿勢の人に好評)
運用上の絶対ルール:切り替えたらゲームを再起動する。
24.5インチモード時の解像度は2368×1332という特殊な数値のため、ゲーム起動中に切り替えるとゲーム側が解像度を認識できず、ボヤけた表示になります。
STEP 6:メンテナンス設定
有機ELならではの項目です。
- ピクセルシフト/スクリーンセーバー:オンのまま(焼き付き予防)
- 画面に横線が出たら:故障ではありません。[パネル設定]→[ピクセルリフレッシュ]を実行(実行中は電源ランプ点滅、触らずに待つ)
- 長時間の放置時はPC側のスリープ設定も併用推奨
XL2566X+ 編
STEP 1:接続と400Hzの有効化
400Hzを出せるのはDisplayPort接続のみです。
| 接続 | 最大リフレッシュレート | 用途 |
|---|---|---|
| DisplayPort 1.4 | 400Hz | PC用(必須) |
| HDMI 2.0 ×3 | 240Hz | PS5などコンソール用 |
M10S同様、Windows側でリフレッシュレートを400Hzに手動変更するのを忘れずに。
STEP 2:まず最初にブザーを切る
メニュー操作のたびに「ピッ」と鳴る操作音が初期設定でオンです。
メニュー→システム→その他の設定→ブザー→オフ
深夜プレイ勢は真っ先にやりましょう。
STEP 3:AMA(オーバードライブ)完全解説
そもそもAMAとは何をしているのか
AMA(Advanced Motion Accelerator)は他社でいう「オーバードライブ」。液晶に通常より高い電圧をかけて、ピクセルの色切り替えを無理やり加速させる技術です。
ただしこれは諸刃の剣で、電圧をかけすぎると目標の色を通り過ぎてしまう「オーバーシュート」が発生します。画面上では動くものの輪郭に不自然な色滲み(逆残像)として現れ、残像を消すための機能が逆に残像っぽいノイズを生むという本末転倒が起きます。AMA設定の本質は「速さとオーバーシュートのトレードオフをどこで取るか」です。
プリセット3種の実測評価
XL2566K(前モデル)の測定データでは、この差が数値ではっきり出ています。
| 設定 | 応答速度(実測傾向) | オーバーシュート | 判定 |
|---|---|---|---|
| オフ | 平均7ms超と遅い。高リフレッシュレートに追いつかず本末転倒 | なし | 非推奨 |
| 高 | 2.5〜4ms台まで劇的に改善 | 少ない | 基本これ一択 |
| プレミアム | 見かけ上は最速だが色滲みが強く、知覚上はむしろ「高」に劣る | 強い | 単体では非推奨 |
XL2566X+で進化したポイント
従来のZOWIE機は「高」設定でも、最大リフレッシュレート以外(60Hzのコンソール接続時など)ではオーバーシュートが出やすい癖がありました。XL2566X+ではリフレッシュレートに応じて補正量が自動最適化されるようになり、60〜400Hzのどこでも「高」のままで綺麗な応答が得られます。設定に詳しくない人でも「高」に決め打ちで問題ない、というのは地味ながら大きな進化です。
カスタム設定(0〜30)で詰める
多くのモニターが3〜5段階のプリセットしか持たない中、XL2566X+は31段階で微調整できます。検証レビューによる「高」相当の基準値は以下。
| リフレッシュレート | カスタム値の目安(「高」相当) |
|---|---|
| 400Hz | 12前後 |
| 240Hz | 10前後 |
| 120Hz | 8前後 |
| 60Hz | 6前後 |
チューニングの方向性:
- 色滲みが気になる→基準値から1〜2下げる
- 応答をさらに速くしたい→基準値から上げる(15を超えたあたりからオーバーシュートが目立ち始めるという報告あり)
- 調整はUFO Test(ブラウザで動く残像テスト)を表示しながら行うと、色滲みの変化が目視で確認しやすいです
STEP 4:DyAc2完全解説(このモニターの本体)
DyAc2の仕組み:なぜ黒を挟むと残像が減るのか
人間が感じる残像には、パネルの応答速度由来のものとは別に「ホールドボケ」があります。1フレームの間、画面が表示され続けること自体が原因のボケで、パネルがどれだけ速くなっても原理的に消えません。
DyAc(Dynamic Accuracy)系の機能は、フレームとフレームの間にバックライトを消灯した「黒」を挟むことで、このホールドボケごと潰す技術。DyAc2では従来の下部のみだったバックライトがデュアル(左右展開)構造になり、より精密な制御で残像低減効果を高めつつ、旧世代の弱点だった輝度低下が大幅に改善されています。
リコイル制御中の着弾点確認、レレレ撃ち相手のトラッキングなど「画面が激しく動く最中に細部を見る」場面で効果を発揮します。
設定の組み合わせ方
| 目的 | DyAc2 | AMA | 備考 |
|---|---|---|---|
| バランス重視(推奨) | 高 | 高 | まずこれで2〜3日プレイ |
| 残像低減を最大化 | プレミアム | プレミアム | AMAプレミアムの色滲みをDyAc2の黒挿入が視覚的に打ち消す設計。この組み合わせでのみプレミアムが活きる |
| 目が疲れる場合 | オフ | 高 | DyAc2は高速明滅なので体質差が大きい |
重要なのは「AMAプレミアムはDyAc2併用が前提のチューニング」という点。DyAc2オフでAMAだけプレミアムにすると、色滲みだけが残って逆効果です。
DyAc2使用時の注意点
- Adaptive-Sync(VRR)と排他。両方オンにはできません。fpsが上限に張り付く競技タイトルはDyAc2、fpsが揺れる重いゲームはVRR、と使い分け
- 黒挿入の性質上、画面は高速で明滅しています(目視では認識できない速度)。30分プレイして目の疲れやチラつき感があれば設定を1段下げるか、オフにして体質に合うか確認を
- 60Hz〜400Hzの全リフレッシュレート域で使用可能。PS5(120Hz)接続時にも使えるのは意外と知られていないポイント
- DyAc2使用中も輝度調整が可能(旧DyAc+からの改善点)
DyAc2を使わないなら、このモニターを選ぶ意味を再考する
厳しい言い方をすると、DyAc2をオフにしたXL2566X+は「発色に劣るFHD 400HzのTN」でしかありません。目が疲れて常時オフ運用になりそうなら、素の低残像で戦えるOLED機(M10Sなど)のほうが向いています。購入前に店頭で体質チェックできるならベストです。
STEP 5:視認性チューニング
ZOWIEの真骨頂である視認性系の設定です。
| 項目 | 推奨値 | 効果 |
|---|---|---|
| Black eQualizer | 5〜10 | 暗所を持ち上げて敵を視認しやすく。上げすぎると画面全体が白っぽくなり不自然に |
| Color Vibrance | 初期値〜12 | 彩度を上げて敵キャラの色を浮かせる。ゲーム本来の色を壊すので好みが分かれる |
「設定を詰めるのが面倒」な人への近道が2つあります。
- XL Setting to Share:公式配布ツール。プロゲーマーや公式エンジニアがゲーム別にチューニングした設定プロファイルをダウンロードしてそのまま適用可能
- Auto Game Mode:起動したゲームを検知して画質モードを自動切り替え。VALORANT→CS2→ブラウザのような行き来でいちいち手動変更が不要に
STEP 6:S.Switchとプロファイル運用
付属の有線コントローラー「S.Switch」に設定プロファイルを登録しておくと、手元のボタンひとつで切り替えられます。
XL2566X+はビデオ入力ごとの自動プロファイル切り替えに非対応(直前の設定が引き継がれる仕様)なので、PCとPS5を併用する人はS.Switchに「PC用」「PS5用」を登録しておく運用がベストです。
両機種共通:ゲーム側でやっておくべきこと
モニター側だけ設定しても、ゲーム側のfpsが出ていなければ意味がありません。
- VALORANT:設定→ビデオ→「最大FPS(常時)」のfps上限を解除、またはモニターのリフレッシュレート以上に設定
- fps確認:M10Sはフレームレートカウンター機能、XL2566X+も同様のOSD表示で「実際に480/400fps出ているか」を必ず確認
- NVIDIA Reflex:対応タイトルではオン+ブースト推奨(システム遅延の削減)
- ゲーム内のグラフィック設定は「低」基準。この2台を買う人にとって画質設定は「fpsを削る敵」です
まとめ:設定チェックリスト
M10S(所要時間15分)
- DisplayPort接続+Windows側で480Hz有効化
- G-SYNC設定(使う派/使わない派を決める)
- 画質モード「FPS Pro+」を選択
- 色温度を暖色寄りに補正、明るさ80以上
- ブラックイコライザー3〜5
- HDRは競技プレイではオフ(使うなら「ゲームHDR」)
- Fnaticプロ設定のインポートを試す(INZONE Hub)
XL2566X+(所要時間10分)
- DisplayPort接続+Windows側で400Hz有効化
- ブザーをオフ
- AMA「高」(詰めるならカスタム12前後)
- DyAc2「高」からスタート、最大化するならDyAc2+AMA両方プレミアム
- Black eQualizer 5〜10
- VRRとDyAc2の優先順位を決める
- S.Switchにプロファイル登録
設定が済んだら、UFO Testで「ちゃんと高リフレッシュレートで動いているか」を最終確認するのがおすすめです。買ったのに240Hzのまま使っていた…という事故、意外と多いです。
本記事の設定値は実測レビュー・公式情報をもとにした目安です。個体差や環境によって最適値は変わるため、最終的にはご自身の目で微調整してください。


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